タイ・バンコクで妊活中、または妊娠中に、屋台やローカル食堂で「これ食べて大丈夫かな?」と迷ったことはありませんか?
バンコクの食生活は豊かで、日本では見たことのないようなメニューも珍しくありません。そこで、ローカルのタイ人が妊活中に気をつけている食生活をもとに、私たち日本人も避けた方がいいタイ料理を紹介します。
はじめに:タイの食生活と妊活
バンコクでの暮らしは、屋台やフードコート、デリバリーが充実していて、外食が日常という方も多いはず。一方で、妊活や不妊治療を始めると「日本の常識とタイの食事、何が違うんだろう?」「ローカルフードは赤ちゃんを望む体に影響しないかな?」と気になりはじめるものです。
特にタイ料理には、生の魚介や発酵食品、ハーブを使ったメニューが多く、日本にいたときには出会わなかった「注意すべき食べもの」が存在します。とはいえ、過度に怖がってタイ料理を一切やめる必要はありません。リスクの中身と理由を知っておけば、ほとんどのメニューは選び方・頼み方で安全に楽しめます。
まず押さえたい大前提
タイの不妊治療クリニックが共通して挙げているポイントはシンプルです。
妊娠を望む3か月ほど前から、卵子や精子の質・ホルモンバランス・着床に関わる体内環境が整いはじめるため、この時期の食事が一定の意味を持つとされています。避けたい食べ物として現地で繰り返し挙げられるのは、
- 生もの・加熱不十分な食品
- アルコール
- カフェインの摂りすぎ
- 加工食品・高塩分・高糖質
- ホルモンに作用しうる一部のハーブ・サプリ
の5カテゴリです。
これをタイ料理に当てはめると、注意すべきメニューが見えてきます。
妊活中に気をつけたいタイ料理
1. 生のカニ・プラーラー入りソムタム(ส้มตำปูปลาร้า)

ソムタム(青パパイヤのサラダ)そのものが危険なわけではありません。問題は具材です。ローカルなソムタムには、生の塩漬けガニ(ปูดอง/プードーン)や、加熱していない発酵魚醤プララー(ปลาร้า)が入ることが多く、ここに寄生虫や細菌のリスクが潜みます。
タイ保健省系の情報では、生のカニを使ったソムタムは肺吸虫(パラゴニムス)、淡水魚由来のプララーは肝吸虫(オピストルキス)の感染源になりうると注意喚起されています。妊娠初期は食中毒による激しい下痢が母体に負担となるため、妊活中から避けるのが無難です。
安全に食べるコツ:注文時に「マイ・サイ・プーロン、マイ・サイ・プラーラー(生ガニとプララー抜き)」とお願いする、もしくはノーマルなソムタム(タムタイ)などを選びましょう。塩分も非常に高いメニューなので、頻度はほどほどに。
2. 生・半生のイサーン料理(ラープ・コーイ)

ラープ(ลาบ)やコーイ(ก้อย)には、加熱していない生肉・生の淡水魚を使った「ディップ(生)」バージョンがあります。タイ語のニュースや疾病管理局の情報では、生の淡水魚や生肉の摂取が肝吸虫症や条虫(サナダムシ)感染の主要因として繰り返し警告されています。
これらの寄生虫は加熱で防げます。注文時は「スック(火を通したもの)」を選び、生のラープ・コーイは妊活中は避けましょう。
3. ネーム・生発酵肉(แหนม)

ネームは豚肉を発酵させた酸味のあるソーセージ状の食品で、屋台やコンビニでもよく見かけます。加熱せずそのまま食べるタイプは、発酵食品とはいえ加熱不十分な生肉であり、リステリアなどの細菌や寄生虫のリスクが残ります。火を通したネーム料理(ネーム・トートなど揚げ・焼き)を選ぶのが安心です。
4. タイティー・カフェイン飲料(ชาเย็น・กาแฟโบราณ)

タイの甘いミルクティー「チャーイェン」やタイ式アイスコーヒー「オーリアン/カフェボーラン」は、ベースが紅茶・濃いコーヒーでカフェインを含みます。タイの情報では紅茶1杯あたり約25〜70mg、コーヒーは1杯90〜170mg程度のカフェインが目安です。
カフェインについては、米国産婦人科学会(ACOG)が妊娠中は1日200mg未満を推奨しており、タイの不妊治療クリニックも妊活中から1日200mgを超えないよう勧めています。1日200mgを超えると流産リスクが上がるという報告がある一方、適量のカフェインと自然妊娠率には明確な悪影響はないとする研究もあり、評価は分かれます。
神経質になりすぎる必要はありませんが、チャーイェンやアイスコーヒーを1日に何杯も飲む習慣がある方は、本数を減らす・ディカフェに変えるといった調整がおすすめです。
5. アルコール(ビア・タイの地酒など)

タイのビールやお酒も、妊活中は控えたいカテゴリです。タイの不妊治療クリニックは、少量のアルコールでも卵子・精子の質を下げ、流産や先天異常のリスクを高めうるとして、妊娠を計画する少なくとも3か月前からの禁酒を勧めています。これは女性だけでなく男性側にも当てはまります。
6. 水銀の多い大型魚

タイ料理に毎日登場するわけではありませんが、メカジキ・サメ・マグロ(特に大型のもの)など水銀含有量の高い魚は、妊活・妊娠中は量を控えるのが一般的な推奨です。タイの情報でも「水銀の多い魚」は避けるリストに挙げられています。
7. 高塩分の発酵・漬け物系(ของหมักดอง)

塩辛いカニの塩漬け、魚醤、塩漬け卵(カイケム)、各種漬け野菜など、塩分の非常に高い発酵・漬け物食品は、心臓や腎臓に負担をかけるとしてタイの情報でも控えるよう挙げられています。妊活そのものへの直接影響というより、全身のコンディションを整える観点での注意点です。
8. 甘い飲み物・デザート(高糖質)

タイのスイーツや砂糖たっぷりの飲み物(甘いミルクティー、練乳入りドリンク、各種カノムなど)は、血糖値の急上昇やインスリン抵抗性につながり、PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)など妊娠に関わる状態に影響しうるとされています。完全にやめる必要はありませんが、頻度と量を意識したいところです。
特に注意:ホルモンに作用しうるタイハーブ・「女性用」民間薬

ローカルの薬局やマーケットでは、「子宝」「子宮を整える」とうたうタイハーブやサプリ(ヤー・サトリー=女性用薬)が手に入ります。妊活によかれと思って手を出す方もいますが、ここは慎重になるべきポイントです。
タイのマヒドン大学薬用植物情報などでは、クワオクルア(กวาวเครือ/プエラリア)、ワーンチャックモッルーク(ว่านชักมดลูก)、紅花(ドークカムフォイ) などは、女性ホルモン様作用や子宮収縮作用を持つものがあり、妊娠中・授乳中の使用は避けるべきとされています。甘草(チャエムテート)、高麗人参(朝鮮人参)、当帰(タンクイ)なども、ホルモンに影響しうるため自己判断での使用は注意が必要です。
「天然・ハーブだから安全」とは限りません。妊活中・不妊治療中のサプリやハーブは、必ず主治医に相談してから使ってください。クリニックで処方される葉酸・ビタミンD・DHAなどとは性質がまったく異なります。
逆に、積極的に摂りたいもの

避けるばかりではなく、タイの不妊治療クリニックが「摂るとよい」と挙げているものも紹介しておきます。
良質なタンパク質(魚、卵、豆腐、豆類)、色とりどりの野菜・果物(ビタミンA・C・Eと抗酸化物質)、玄米やキヌアなどの全粒穀物、そして葉酸・鉄・カルシウムといったビタミン・ミネラル。タイは新鮮な野菜やフルーツ、屋台のグリル系タンパク質が手に入りやすいので、選び方次第でむしろ妊活向きの食環境とも言えます。完熟パパイヤやマンゴーなど、現地のフルーツも適量なら強い味方です。
まとめ:怖がるより「選び方」を知る
タイ料理で妊活中に気をつけたいポイントを一言でまとめると、「生もの・加熱不十分・高塩分・自己判断のハーブを避け、火の通ったものを選ぶ」 です。ソムタムも、ラープも、頼み方を少し変えるだけで安全に楽しめます。バンコクの豊かな食を我慢ばかりするのではなく、リスクの理由を理解して上手に付き合っていきましょう。
不妊治療中は、治療ステージ(採卵前・移植前後など)によっても食事の注意点が変わります。気になることがあれば、自己判断せず通院先のクリニックや、バンコク不妊治療ナビを通じてご相談ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、診断・治療・特定の食事指導を行うものではありません。体調や治療内容は個人差が大きいため、具体的な判断は必ず医師にご相談ください。
参考文献
VFC Center(V-Fertility Center)「เตรียมตั้งครรภ์ห้ามกินอะไร?」
https://v-ivf.com/th/2025/11/foods-to-avoid-before-pregnancy/タイ健康促進財団(สสส.)生のラープ・コーイと肝吸虫リスク
https://www.thaihealth.or.th/タイ健康促進財団(สสส.)生ガニのソムタムと肺吸虫リスク
https://www.thaihealth.or.th/タイ疾病管理局(กรมควบคุมโรค)淡水魚の生食と寄生虫
https://ddc.moph.go.th/マヒドン大学 薬用植物情報「妊婦が避けるべきハーブ」
https://medplant.mahidol.ac.th/user/reply.asp?id=6488HDmall「ว่านชักมดลูก」「กวาวเครือขาว」解説
https://hdmall.co.th/米国産婦人科学会(ACOG)カフェイン推奨量、各種カフェイン・パパイン研究(PubMed 12144723 ほか)




