「バンコク不妊治療ナビ」代表のまにょです。
今回は、私たち夫婦がタイ・バンコクのSAFE Fertility Centerで実際に取り組んだ「人工授精」についてお話ししたいと思います。
バンコクには不妊治療クリニックが数多くありますが、その中でなぜSAFEを選んだのか、またこれまでに試した「タイミング法」などについては、以下の記事にまとめています。ぜひあわせてご覧ください。
これまでの不妊治療をおさらい
結婚後しばらくしてから1年間妊活に取り組むも、自然妊娠には至らなかった私たち。SAFEで不妊検査を受けたところ、私は 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS) であることがわかりました。
その後、タイミング法を5回試しましたが授かれず…。
卵管造影検査を受けても特に異常はなく、いよいよ人工授精へステップアップすることになりました。
日本とタイの不妊治療の違い
ちなみに、
- 治療前に行う各種検査
- タイミング法
- 人工授精
これらについては、日本とタイで大きな技術的な差はあまりありません。
本格的に違いが出てくるのは、次のステップである採卵・着床前診断(PGT-A)や体外受精・顕微授精からです。
そのため、採卵を伴わない治療であれば、費用面では日本で受ける方が安心だと思います。
私たち夫婦の場合は、すでにタイに住んでおり「タイで治療を続けたい」という希望もあったため、費用が日本より高くなるのを承知のうえで、引き続きタイで治療を受けることにしました。
人工授精の流れ
私の場合、人工授精の基本的な流れは以下の通りでした。
- 生理開始後にホルモン剤を処方
- 排卵前に内診&ホルモン注射を処方(ここまでは「タイミング法」と同じ)
- 排卵にあわせて人工授精
このサイクルで、1周期あたり3回の通院となりました。
人工授精当日の流れ
人工授精当日は、夫の「精液採取」もあるため、ふたり一緒に通院します。
当日のスケジュールはこんな感じでした。
- 朝8時:夫が専用の部屋で精液採取
- 精子を洗浄・濃縮するため、しばらく待機
- 11時頃:私が人工授精を受ける
- 処置後はしばらく横になって待機してから終了
夫の精液採取で、まさかのトラブル発生!
ここでちょっと余談なのですが…夫の精液採取で思わぬトラブルがありました。
SAFEの待合室には赤ちゃんの写真がたくさん飾られていてとても和やかな雰囲気なのですが、精液採取の専用ルームでは、なんとセクシーなお姉さんの写真が飾られていて、好きな動画を選んで視聴できるそうなんです(笑)
私はもちろん入ったことがないので知らなかったのですが、夫から部屋の写真を見せられて、思わず吹き出してしまいました。
実際に使用した専用部屋の動画はこちら
ただ、夫にとっては全然笑いごとではなく…。
「プレッシャーがすごくて、全然スムーズにできなかった…」としょんぼり。
さらに、人工授精のたびに毎周期この採取が必要なのですが、一度は「量が足りない」と言われてやり直し(!!)になったこともあり、その時は本当にしんどかったそうです。
不妊治療というと、女性の負担ばかりに目が向きがちですが、実際には男性も男性で大きなプレッシャーやストレスを抱えているのだな…と改めて実感しました。
人工授精前の、意外とキツかった◯◯
夫からバトンタッチして、いよいよ私の番です。病院着に着替えて、まずは待機用のベッドへ移動しました。
実は人工授精のとき、事前にお水をたくさん飲んで膀胱をふくらませ、子宮の位置を調整する必要があります。
そのため、待機室でペットボトルのお水を次々と渡され「しっかり飲んでね〜」と言われるのですが…。
これがなかなか膀胱がふくらまず、思った以上に時間がかかる!
ふくらみが不十分だと「もう少し飲んでね、また後で確認するね」と言われ、施術の時間が毎回ずれ込んでしまいました。
さらに、限界ギリギリまで膀胱パンパンの状態で処置を受け、終わってもしばらく横になって待機…。合計で1時間近く、おしっこを我慢しなければならず、これが本当に地味にキツかったです(泣)
一度は膀胱炎になりかけるくらい膀胱が痛くなってしまい、大変な思いをしました。
いざ、人工授精へ!
ようやく膀胱がしっかりふくらみ、ナースさんのOKが出たところで手術室へ。処置の際には夫も一緒に入室できました。
手術台に横たわり、いつもの担当医師が登場。医療ドラマに出てくるような「ザ・手術室!」という雰囲気に、かなり緊張してしまいました。
名前と生年月日の確認をしたあと、先ほど洗浄された夫の精子をチェック。エコーのモニターを見ながら、精子を子宮に注入していきます。
あれほど緊張していたのに、処置はあっという間。
「え、もう終わり?」と拍子抜けするほど数分で終了しました。
先生がモニターを指差しながら「ここにあるのが精子ですよ、しっかり注入できていますね」と説明してくれて、その場でエコー写真も撮って渡してくれました。
器具を入れる際に少し出血もありましたが、施術中もその後もほとんど痛みはなく、麻酔も不要。
私の場合は、処置そのものよりも「その前後のおしっこ我慢タイム」の方が何倍も大変でした…。
処置後は再び待機室に戻り、しばらく安静に。
時間になったらナースさんから声をかけてもらい、この日の人工授精は終了となりました。
1周期あたりの費用内訳
タイミング法のときは、1周期あたりトータル3万円弱で済んでいたので、そこまで大きな負担感はありませんでした。
ところが、人工授精にステップアップすると一気に金額が跳ね上がり、金銭的なプレッシャーも大きくなってきます…(とはいえ、のちに体験する顕微授精と比べれば、まだかわいいレベルでしたが)。
通常の処方・内診の金額(タイミング法と同じ)
項目 | 金額(バーツ) |
---|---|
医師料(Doctor Fee) | 1,000 |
医薬品・医療用品(Medicine and Medical Supplies) | 5,047 |
超音波検査(Ultrasound) | 1,500 |
看護師料(Nurse Fee) | 100 |
登録料(Registration Fee) | 100 |
合計 | 7,747 |
人工授精当日の金額
項目 | 金額(バーツ) |
---|---|
医師料(Doctor Fee) | 2,000 |
助手医師料(Assistant Doctor Fee) | 2,000 |
検査料(Laboratory) | 2,700 |
手術室使用料(Operating Room) | 5,099 |
医薬品・医療用品(Medicine and Medical Supplies) | 1,120 |
超音波検査(Ultrasound) | 100 |
看護師料(Nurse Fee) | 100 |
合計 | 13,119 |
人工授精当日の料金は、当時のレートで約5万2,000円。これに通常の処方や内診の費用を加えると、1周期あたりの合計はおよそ8万円でした。
※こちらはあくまで2022年当時の料金です。2025年現在の価格については、以下のよりお問い合わせください。
人工授精を3回試すも授かれず…一度治療はお休みすることに
人工授精のあとは、生理が来なければ妊娠判定へ進めるのですが、私の場合は3回チャレンジしても、残念ながら毎回リセット…。
金銭的にも身体的にも、タイミング法のときよりずっと負担が大きかったので、その分つらさも増していきました。
特に2回目のときは、卵子も精子も状態がよく、先生や通訳さんにも「今回はいけるはず!」と太鼓判を押されていただけに、生理が来てしまった時のショックは本当に大きかったです。
さらに、4回目のチャレンジ中に、プライベートで大きなトラブルが発生。不妊治療のストレスと重なり、とてもじゃないけれど心身ともに耐えられないと感じ、このタイミングで一度治療をお休みすることにしました。
このとき、私たちが不妊治療を始めてから約1年半、妊活を始めてから数えると、すでに2年半が経っていました。
毎周期ごとに期待しては、リセットされて落ち込む…。そんな「不妊治療疲れ」のような状態に陥り、私のメンタルは限界に近かったのです。
夫とも話し合いを重ね、半年ほど治療を休むという結論に至りました。
人工授精は終了、いよいよ体外受精(顕微授精)へ
半年後。トラブル自体は解決していなかったものの、私の気持ちは少しずつ回復していき、「そろそろ治療を再開してもいいかな」と思えるようになりました。
SAFEで先生に相談したところ、「人工授精は3回試して結果が出なかったから、4回目はやめて体外受精に進んだ方がいいでしょう」との提案が。
そのため、本来受けるはずだった4回目の人工授精はスキップし、いよいよ次のステップ「体外受精(顕微授精)」へ進むことになったのです。
次回は、体外受精に向けた大きなステップ「採卵」について、私の体験を詳しくご紹介していきたいと思います。